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関連者間取引の書類、税務調査で聞かれたらどうなる?青色申告取消しとの関係も解説

前回の記事では、関連者間取引に係る「特定事項記載書類」に何を書けばいいのかを解説しました。今回は、その続きとして、実際の税務調査でこの書類がどのように扱われるのか、そして保存が不十分だった場合に何が起きるのかを解説していきます。

結論からいうと、書類が完璧に揃っていなくても、いきなり青色申告の承認取消しになるわけではありません。ただし、青色申告が取り消されると、欠損金の繰越控除や特別償却などの税務上の特典が一気に使えなくなる、非常に重い処分でもあります。「多少の不備なら大丈夫」と安易に考えてよい話でもありません。

この記事では、その具体的な線引きと、実務上どこまで注意すべきかを、国税庁の公表資料に基づいて詳しく解説していきます。前回の記事(「何を書けばいいか」編)とあわせてご覧いただくと、制度の全体像がつかめます。

目次

この記事の結論

  • 特定事項記載書類の保存場所は、自社の納税地等が原則。親会社が一元管理していても、調査時に遅滞なく入手・提示できれば問題ない
  • 保存が不十分な場合、調査官はまず「何が足りないか」を明示し、期間を区切って提出を求めるのが原則
  • 保存の不備=即・青色申告取消しではないが、これは調査官側の裁量による対応の余地であり、納税者側が「軽微だから大丈夫」と自己判断してよいものではない
  • 青色申告が取り消されると、欠損金の繰越控除や特別償却などの特典が一気に使えなくなる
  • 欠損金の繰越控除は、青色申告取消しとは別に、書類保存の状況によって適用を受けられなくなることがある
  • 取消処分後に書類を提示しても、処分の効力は覆らない
  • 白色申告法人など青色申告以外の法人にも、この書類保存の義務自体は課される

(出典:国税庁「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例の運用に当たっての基本的な考え方及び取扱いについて」)

特定事項記載書類は、どこに保存しておけばいい?

原則は、自社の納税地、または関連者間取引に関係する国内の事務所・事業所の所在地(納税地等)で保存することになっています。

ただし、実務でよくあるのは、親会社側でグループ全体の取引書類を一元管理しているケースです。この場合、調査担当者から求めがあったときに、内国法人が関連者から必要な書類を遅滞なく入手して提示できる体制が整っていれば、自社の納税地等で保存されているものとして扱われます。

この判断は、入手・提示に係る体制や要する期間などの事情に加えて、提示された情報の内容が実際に必要記載事項を確認できるものかどうかという観点からも行われます。入手・提示ができないと判断された場合は、次に説明する「保存が不十分な場合」の対応に進みます。

書類の保存が不十分だった場合、調査官はどう対応する?

特定事項記載書類の保存がない、または記載の程度が不十分と認められる場合、調査担当者は次の3つを調査対象者に明示した上で、合理的な期間を定めて書類の取得・作成及び提示を求めることとされています。

  1. 取引区分:その取引がなぜ関連者間取引に当たるのか、どの類型に該当するか
  2. 記載事項:具体的にどの特定事項が不足しているか
  3. 不足の程度:記載のどこがどう不十分で、それが税務調査上なぜ必要なのか

「書類が足りないので全部出してください」という漠然とした求めではなく、「この部分のこの情報が足りないので、いつまでに出してください」という形で求められる点がポイントです。また、このやり取りの経過については、調査担当者側で詳細に記録することとされています。

保存が不十分だと、青色申告はすぐに取り消されてしまう?

ここが最も気になる方が多いところだと思います。

まず、取消処分の重さを理解しておく必要があります。青色申告が取り消されると、欠損金の10年間の繰越控除、赤字が出たときの繰戻し還付、特別償却や各種税額控除といった租税特別措置の多くが使えなくなります。それくらい経営インパクトの大きい処分です。

特定事項記載書類の保存等の義務は、青色申告法人の帳簿書類保存に関するルールの一部に位置づけられているため、理屈の上ではこの義務を果たしていないと取消し事由になり得ます。ただし、事務運営指針では、単に「保存があるかないか」だけで判断するのではなく、実際の保存状況やその是正の可否、違反の程度その他の事情を踏まえて、適切に判断するとされています。そのうえで、注記部分には「義務違反の程度が軽微である場合には、取消処分を行わず、改善指導にとどめることができる」と明記されています。

ここで注意していただきたいのは、これはあくまで調査官側の裁量規定だということです。「多少の不備なら平気」と納税者側が自己判断してよい話では全くありません。前回の記事で説明した基準(第三者目線で分かる程度の記載)を満たす書類を揃えることが大前提であり、その上で万が一の不備が見つかった場合に、機械的に即取消しにはならない余地がある、というだけの話です。

欠損金の繰越控除にも影響すると聞いたけど、本当?

本当です。ここは青色申告取消しとは別軸の注意点として押さえておく必要があります。

繰越控除の対象となる欠損金については、その欠損金が生じた事業年度に係る特定事項記載書類を含む帳簿書類の保存等が十分に行われていない場合、繰越控除の適用を受けられないことがあるとされています。

青色申告取消しには「違反が軽微なら改善指導で済む」という余地がありますが、繰越控除の保存要件はまた別の話です。赤字が出ている事業年度がある会社は、この点を特に意識しておく必要があります。

取消処分にはどんな手続きが必要?後から書類を出せば挽回できる?

取消処分を行う場合、処分理由には、取消しの基となった事実、取消事由に該当する理由、特定事項の内容、記載が不十分な場合はその程度まで、具体的に記載することとされています。理由もなく一方的に取り消される制度ではありません。

一方で、取消処分がなされた後、不服申立ての段階で「実はちゃんと書類はありました」と特定事項記載書類を提示したとしても、それによって元の取消処分の効力が覆るわけではないとされています。後出しでの挽回はできないため、税務調査の最中に対応することが重要です。

白色申告法人など、青色申告以外の法人はどうなる?

この特例は、青色申告法人だけでなく、白色申告などその他の普通法人にも適用されます。青色申告ではないため承認取消しという概念自体はありませんが、書類の保存状況などから取引の実態や所得金額を実額で把握することが難しいと判断された場合には、推計課税の要否が検討されることになります。

また、当初は青色申告だった事業年度であっても、取消事由に該当する事実があれば、その事業年度まで遡って承認が取り消されることがあります。その場合、取消しの対象となった事業年度以降は推計課税の対象にもなり得ます。青色申告法人か白色申告法人かにかかわらず、この書類の保存義務自体は課され続けるという点は共通しています。

まとめ

ここまでの内容を整理すると、次のようになります。

  • 保存場所は納税地等が原則だが、親会社一元管理でも遅滞なく提示できれば問題ない
  • 保存が不十分な場合、調査官はまず不足点を明示し、期間を定めて提出を求める
  • 保存不備=即取消しではないが、これは調査官側の裁量であり、自己判断で軽視してよい話ではない
  • 青色申告取消しは、欠損金繰越控除や特別償却などの特典が使えなくなる重い処分
  • 欠損金の繰越控除は、取消しとは別に、書類保存の状況によって適用を受けられなくなることがある
  • 取消処分後に書類を出しても手遅れなので、調査対応中にきちんと揃えることが重要

前回の記事で解説した「第三者目線で分かる程度の記載」という基準を満たす書類を、日頃から整えておくことが最大の対策です。実際に税務調査で確認された際の具体的な対応については、専門家にご相談いただくことをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 特定事項記載書類は、必ず自社で保存しないといけませんか?

自社の納税地等で保存するのが原則ですが、親会社が一元管理している場合でも、調査時に遅滞なく入手・提示できる体制があれば、自社での保存があるものとして扱われます。

Q2. 書類が足りないと、調査でどんなことを求められますか?

調査担当者から、取引区分・記載事項・不足の程度の3点を明示された上で、合理的な期間内に書類の取得・作成と提示を求められます。

Q3. 書類の保存が不十分だと、すぐに青色申告が取り消されますか?

いいえ、保存の有無のみで機械的に判断されるものではありません。ただし、これは「軽視してよい」という意味ではなく、あくまで調査官側の裁量による対応の余地です。

Q4. 青色申告が取り消されると、具体的にどんな影響がありますか?

欠損金の10年間の繰越控除、繰戻し還付、特別償却や各種税額控除といった租税特別措置の多くが使えなくなります。

Q5. 欠損金の繰越控除と、青色申告取消しは同じ話ですか?

別の話です。青色申告取消しには軽微なら改善指導で済む余地がありますが、欠損金の繰越控除は、その事業年度の帳簿書類の保存が不十分だと、取消しの有無にかかわらず適用を受けられないことがあります。

Q6. 取消処分の後に書類を見つけて提出すれば、取り消しを覆せますか?

覆りません。取消処分後の不服申立ての段階で書類を提示しても、原処分の効力には影響しないとされています。

Q7. 白色申告の会社にも、この書類保存の義務はありますか?

あります。この特例は青色申告法人以外の普通法人等にも適用され、書類の保存状況によっては推計課税が検討されることがあります。

著者情報

熊坂開基税理士事務所スタッフ:熊倉佑菜
簿記2級保持、税理士試験勉強中

更新日:2026年9月30日
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断については、必ず所轄の税務署または税理士にご確認ください。
また、本記事は執筆時点で公表されている情報にもとづいており、その後の法改正・制度変更等により内容が変更・修正される場合があります。本記事の内容を利用したことにより生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

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この記事を書いた人

税理士の有資格者のチェックを受けながら、内部のスタッフが執筆を担当しています。

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